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「エデン(原題/EDEN)」

副題 我が思考の師、スタニスワフ・レム (Stanisław Lem)の命日に寄せて

ハイ、皆様  今晩は
只今、気分は絶讃「コーディネーター」な猫叉ですw
我が思考の師でもあるレムの作品群の中で 実は一番お気に入りなキャラクターなのが、此の「エデン(原題/EDEN)」に登場する「コーディネーター」氏です
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「エデン(原題/EDEN)」

固有名は有りません
文字通り
「吾が輩はコーディネーターである。(固有の)名前はまだ無い」
な御方です ^^;
彼の立ち位置を少しだけ解説するなら
どこかへ移動中の宇宙船乗組員達の纏め役にしてリーダーですかね
宇宙船の乗組員(メンバー)は、「化学者」、「技師」、「物理学者」、「サイバネティスト」(オートマット(ま、平たく、と言うか私達日本人に馴染みの深い言葉で言うなら「ロボット」ですね、の専門家)に「ドクター」(医師)と、此のコーディネーター氏の5人です

「大失敗(原題/fiasko)」と違う処は、
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「大失敗(原題/fiasko)」

物語の中心に来る先遣隊「ヘルメス」号の指揮官がスティアガードで、彼は何ちゃら社会理論の専門家(確かゲーム社会理論だった様な気が、、で其のゲーム社会理論って何ぞ?と聞かれてもサッパリ判りませんがw)でもあった事なのですが、「エデン」のコーディネーター氏は、どうも何かの専門家ではない様です
作中にも「自分は専門家ではないから」と言うような言い回しが出て来ますし
否、もしかしたらこう言う宇宙船乗組員のリーダーを「専門」とする専門職なのかも知れません
実は、エデンでは一度も指揮官と言った様な固有名詞が出て来ません
それどころか、彼(コーディネーター氏)がリーダーだ、と言う説明も無いんですよ
彼の役割は、文字通り「コーディネーター」の様なのですね
但し、私達が思い描くコーディネーターと、此のコーディネーター氏との間には、割りと大きな隔たりが有るように思えます
と言うのも、最初から点呼を取ったり、指示を出したり、意見を統括したり、メンバーからの意見がない時は自身で決断したりして居ますからね
単なる調整役と言うより、可成りリーダー的要素の強い役割を担うコーディネーター、と言う方が正しいかも知れません
汚れ役も進んで引き受けて居ますしね
彼は、彼の「スティアガード」より、少しだけ攻撃的で、決断を下すのが早いように想います
そう言えば、スティアガードの場合は「部下」であったのに対し、彼はメンバー達を「仲間」として扱って居るようです
此の辺り、読み比べるとなかなか興味深い物があります

「大失敗(原題/fiasko)」は、レムの長編小説最後の作品にして、所謂彼のファースト・コンタクト物の集大成的な作品でもありますから、
此のコーディネーター氏がより洗練されて行った形が、指揮官であり、専門家でもあり、更に宙航士でもあるスティアガードなのだとは思います
他にも色々「大失敗(原題/fiasko)」に繋がる設定やシチュエーションが出て来ます

私の「エデン」に対する想いが一般的な代表作「ソラリス」より強いのは、此の「コーディネーター氏」がお気に入り、と言うだけではありません
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「ソラリス (原題/Solaris)」

私自身が所謂探求の迷路に入り込んだ初めての作品が、此の「エデン」であり、
初見よりン十年の月日が経とうとして居るにも関わらず、未だ其の回答(出口)が見えて来ないからに他成りません

命題は至極簡単な物です
< 何故此が「エデン」なのか? >
レム自身は筋金入りの無神論者ですが、彼の母国はキリスト教圏で、カトリックの教えが広く伝わっている土地柄です
(ヨハネ・パウロ2世はポーランド出身)
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空飛ぶ教皇こと「ヨハネ・パウロ2世」
「エデン」の元ネタは、当然聖書に出て来る彼の「エデン」な訳です

何故アレがエデンなのか?
そもそもエデンとは何か?
其処を解るには何を読んだら良いのか?

とりあえず、当時の私はミルトンの「失楽園」を選びました
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         「失楽園」

次にダンテの「神曲」を選び、、、
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         「神曲」

此の辺りで派手に脱線し路頭に迷い始めます
で、未だに「何故彼が <エデン> なのか判らない」と言う為体です、、、orz

レムの作品にはしばしばギリシャ神話や聖書の引用、果てはラテン語の諺をベースにした台詞や言い回しが出て来ます
此等は生粋の日本人にして、理系思考に憧れる只の文系崩れには大変ハードルの高い世界です
と言うのも
此等、特にラテン語の諺や聖書 =其れもクソ面白くもない(失礼!)旧約聖書です= は、所謂アルファベット言語圏の知識人には、必須の知識らしいのですね
まぁ コレは日本の所謂知識人層が、源氏物語や古今和歌集をさらっと引用するようなモノ、だそうですが、、、 ^^;
あたしにはどっちも無理なんだよぅ  ヽ(`Д´)ノ 勘弁してくれぇ
嗚呼、暴れて良いですか、、、orz

ま、実際の所、其処まで逝かなくても「富士山」のお題がでれば、
「葛飾北斉の富岳三十六景」 を思い起こしたり、
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葛飾北斎 『冨嶽三十六景』の「神奈川沖浪裏」

< 田子の浦ゆ うち出てみれば 真白にそ 富士の高嶺に雪は降りける > (山部赤人、「万葉集」) と詠めたり、 
< 富士には月見草がよく似合う > (太宰治、「富嶽百景」) が出て来たりるようなモノなんだそうですが
否、其れでも充分ハードル高いです、、、orz

此処等でちょっとばかし絶望に呑まれた私は、些かダークネスな思考に奔りますw
以下、其の時の毒吐くならぬ独白w

厳格な情報統制の在る、見掛け上非常に美しい場所(惑星)がエデン、と言う事なのか
激しい情報統制の結果、著しく偏重してしまった終焉の惑星
だが、かと言って其処を脱する意志も術も得られない閉塞した醜悪な世界
其れがエデン?
違うな
否、違うのでは無く不十分なんだ
神の軛(くびき)を外れたヒトは、情報と言う知恵を手に、何処へ行こうとして居るのだろう
案外其の行き着く先は、彼のクゥインタ星なのかも知れない
私達は皆、心の内にエデンの「技師、ヘンリック」を住まわせ、ピルクスを囲い、エデンの「コーディネーター氏」の声を聴き、スティアガードが感じて居る深い絶望を見て居るのかも知れない

技師・ヘンリック
唯一固有名が描かれて居るエデンの登場人物
恐らく 彼が、彼のみが、人として描かれて居る
彼は人の代表、具現化、象徴なのだろうか

ならば、私達は何処へ行こうとして居るのか
余りにも美しいので、航路を外してまでエデンの近くを飛びたかったヘンリック
人故の計算ミスから起きた一連の旅は、一体彼に、人類に何をもたらしたのだろうか
コーディネーター氏の最後の言葉が、物凄い皮肉と凄まじい現実と、其れに伴う恐るべき真実を現して居るように思われてならない
物事は結局、サイコロを振るかのごとく確率の世界に支配されて居る、とでも言うのだろうか
それこそが、「宇宙の真理」なのだろうか

「エデン(原題/EDEN)」の怖い所は、此を書いたのが他ならぬ「スタニスワフ・レム」で有り、彼はポーランドの作家であり、文字通りの「鉄のカーテン」経験者でも在ると言う事実だろう
然も、此の作家はニヒリストでも、ペシミストでも無い
歴とした科学者の目を持ったリアリストで在る
其の事が、より一層「エデン」を単なる御伽噺から遠ざけて居る
経験から来る「現実」の一つ形がエデンだとしたら?
其の醜悪で、偏重し尽くした歪な世界が、或る意味人の世の最終形態だとしたら?
こんな皮肉で恐ろしい話は他に無いだろう

結果的に「エデン(原題/EDEN)」は、「大失敗(原題/fiasko)」に昇華する事で、或る意味 其の姿を変える
否、「隠された」のかも知れない

にもかかわらず、エデンの、否 エデンを始めとする一連の作品群のテーマは、所謂「ディスコミュニケーション」だ
人知が及ばない認識の限界を描く事で、相互理解の危うさと脆さを指摘する
最終的には彼等は「エデン」の住人とのコミュニケーションに失敗する
其れはあたかも、互いの意志疎通が可能で有るかのような、夢と希望に満ちた一節の後に訪れる、厳しい現実であり、避ける事の出来無い結論でもあった
そして彼等はエデンを後にする
手酷い失敗を犯し、深く辛辣な後悔と懺悔とを彼等自身の内に内在したまま、此の惑星を去る事になる
確率の世界に、其の「希望に満ちた」と言う表現で、虚偽に満ちた現実を堅く塗り込めて覆い隠し、暗澹たる前途の其の全てを其所に賭けながら、飛び続ける事を選ぶ
そうやって人は、今を、過去を、未来を、現実を、誤魔化しながら生きていく
あたかも知恵の実の存在を知りつつ、其れを無いものとしてエデンに住み続ける住人達の様に
真実を知る事は、或る意味、此の世には互いに全く理解も認識も出来ない存在が「在る」と言う事を想い知る事になるのだろう
人の限界とは取りも直さず、己自身の認識の臨界点を知る事に他ならないのだから

やっぱりなんだ
深夜に「エデン」と言うか、レムを読むとこう言う思考に奔り易いのは、或る意味デフォかも知れんなw
多分今日1日、否、当分は「ダークネスな深海魚」だわ、こりゃww
因みに只今気分は、絶賛「コーディネーター氏」にして「スティアガード」で御座いますwww

と、言う事で、本日は我が思考の師「スタニスワフ・レム」の7回忌で御座いました

其れでは、私も師に習い「エデン」から「クゥインタ星」へ赴くとしましょう
還れるかどうかは、非常に怪しい限りなのですがね
何しろ彼の地には、悩み迷える指揮官「スティアガード」と人ならざるリーダーの「コーディネーター氏」がお待ちですから
只、此の期を逃したら其れこそ 「時の輪が接しても」 逢えない可能性が高いですからね
今日ばかりは何があっても征っておかないとw
と言う訳で、一寸思考の師へ遭いに逝って参ります

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