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長い待ち時間を敢えて待つ愉しみ

この所連続して上げた「宇宙戦艦ヤマト2199の考察」シリーズの日記を観て頂ければお判りだと思うが、私は「考える事」が好きだ
是は私の読書好きと関係が深いと思う
今でこそ、そこそこ人並みに頑張れるようになっているが、実は大層な虚弱児だった
幼稚園、小学低学年とまともに通えた月は殆ど無く、熱と薬と注射と布団が主たる友達だった
元々社交的な性格でも無い上に、幼い頃から天性の天の邪鬼でもあったし、何より人より獣の方が好きな変わり者であったから、人との関係を築く努力を殆ど放棄していたと言っても過言ではない
その替わり、本来其れに向けられる筈の労力は総て読書に振り向けられた
暇さえあれば本を読み、隙さえあれば何処かに飛んでいた
成長し身体の方も成長に伴って少しずつ丈夫になって行くと、飛ぶ前にあれこれ考えるようになった
そうなると今度は「読む」「飛ぶ」だけでなく「考える」事が溜まらなく愉しくなった
時は流れ私も何時しか人並みに丈夫になっていた
其れに伴い、次第に飛ぶ「翼」は弱くなっていた
いつしか、すっかり弱くなった翼を「思考」で補うと言う術を覚えていた
この補正作業は今も面々と続いている
私にとって生きる事とは、考える事と同義語だと言っても良い
考えるからこそ人は「葦」では無く「人」で居られる
考えなくなった「考える葦」は最早只の「葦」に過ぎない
其れは私にとって決して大袈裟等ではなく「死」と同義語なのだ
考える事で私は私の自我を確認する
Cogito, ergo sum(コーギトー・エルゴー・スム、cogito = 私は思う、ergo = それゆえに、sum = 私はある)「我思う、ゆえに我あり」
あの有名な標題を私流に変換すると「我思考す、故に我此処にあり」となる
今回「宇宙戦艦ヤマト2199」と言う絶好の媒体を得て、嬉々としてあれこれ考察してしまうには、まぁ、こう言う背景と素質があったのである

実は私には18年間待った本がある。
ソレは未だ私がうら若き女子高校生の時、文庫本カバーの折り返しに「次刊予定」として載っていた物である
待った
ひたすら待った
彼のファンである私達は「待つ事」には慣れていた
否、否応無く慣らされていたからだ
彼の新作を読みたくば「待て」
根気良く待っていれば何時か読める日が来る、かもしれない
何故こんなに不確かなのか
何故なら、其処には様々な事情と理由と下らない現実が複雑に絡んで居り、当分、否、自分達が生きている間には到底解消なぞ望むべくもなかったのだから

その作家は、ポーランド人で翻訳が難解な事でも知られている
内容が一筋縄ではいかない上に難解至極で「造語」が多いのだ
第一、ポーランド語そのものが難しい言語であるらしい
しかも当時まだ、旧ソヴィエト連邦の統治下にあったポーランドでは、内容その他に可成り厳しい検閲がかかっていた
その検閲されまくりの代物がまずロシア語に翻訳されて、ソヴィエト国内で販売される
其処から旧ソヴィエト連邦圏の旧東ドイツに渡り、今度はドイツ語に翻訳されて東ドイツ国内に流通する
其処から同じドイツ語圏の旧西ドイツに渡り、やっと此処で鉄のカーテンをくぐり抜けた作品は満を持してアメリカに渡り英語(米語)に再翻訳される
其処で再度版権等の問題をクリアした物だけが日本にやって来る
こんな状態だったから、当然の様に訳本が出るのは遅い
遅いだけではない
訳本が無事刊行されるかすら不確かなのだ
なかなか次が出ない・・・という事実を、彼のファンは諦めと共に受け入れざるを得ないのである
やれやれ まだ「予定」があるだけマシさ、、、
常にそんな気分である

其れでも文庫本カバーの折り返しに「次刊予定」として載ったものは、比較的早いスケジュールで発売されていた
所が今回の作品は、何時まで待っても出ない
流石に焦れて来る、と言うか、不安が襲う
なんと、そうこうするうちに出版社自身が潰れてしまった、、、OMG!
最悪である

ファンの間で、噂が乱れ飛ぶ
幸い潰れた出版社の版権は大手の出版社が買い取ったようだ
おおっ!
それでは、「次」はH書房から出るのか?
そうらしい
では、何とか読めそうだな

しかし、皆が一日千秋の思いで待ち焦がれる新刊本は何時まで待っても刊行されなかった
然も、そうこうしている間に完全に行方不明になった
そして、そのまま18年が過ぎ去って行ったのである

それは偶然だった。
たまたまネット書店大手の密林で調べ物をしていた私は、本当に何気なく検索したのだ
出た!
否、正確にはまた「刊行予定」になっていたのだが、今度はちゃんと予定日が入っている
しかし、何故出た?!今頃! 本当か?? デマじゃないだろうな???
俄には信じられなかったが取り敢えず「予約」を入れる事だけは忘れなかった
ソレは若干「当初の刊行予定日」より遅れたが、ちゃんと2度目の刊行予定日の翌日、無事私の手元に届いた
全く知らない出版社で、しかもハードカバーになっていたが、兎に角手に入れたのだ!
天にも昇る気持だった
長年待ち焦がれた恋人にやっと再会出来た気分である
早速、大事に上カバーを掛け、翌日から本を持ち歩いた
僅かな時間を惜しんで読み始める
通勤電車の中で、昼食の僅かな待ち時間と休憩時間をフルに使って、一日の家事を進める中で作る細かな空き時間を利用して、、、
完読するのに1年以上かかった
何しろ難しくて1日数行しか読み進められないのだ
読んでも読んでも、解らない事柄が出て来る
調べても調べても、次から次へと果てしなく調べ物が出て来る
何しろ5000語を500語にまで推敲し尽くすと言われる人の作品である
半端な覚悟ではとても読み進められない現実が突き付けられる
でも私は嬉しくて愉しくたまらなかった
ウキウキしながら無い頭をフルに使ってひたすら読解する
この作業がたまらなく楽しい
彼の作品はやっぱりこうでなくちゃね
18年間待った甲斐があったと言う物だよ
普段は出さないで即効ゴミ箱行きか、良い所栞代わりにしか活用した事のない「読者カード」に出版社と翻訳者の方への謝意を細々と書き記してしまった位である
その位嬉しかったのだ

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スタニスワフ・レム著 「虚数」 
此は私の宝物である

今、私はまた「次」が出るのを根気良く待っている
レム本人は2006年3月27日に鬼籍に入ってしまったので、新しい作品は望むべくもない
幸い国書刊行会が一連の大作は、シリーズ物として翻訳(正確には改訳)し、続けざまに刊行してくれたのだが、その選に漏れている物も少なくない
未だ翻訳されていない作品群もあるし、廃刊や出版社の倒産等で行方不明になった後何のフォローも成されず、そのまま出版業界の闇に呑まれている作品も少なからずあるのだ
是非、次は其の当たりの作品を中心にお願いしたいと思う
さてさて「次」に「出逢える」のは、一体何年先になるのだろう
その時を目標に今日も私は「考える」
其れこそ私が彼の思考に近づく唯一にして無二の手段なのだから

私の原点
『エデン』『ソラリス』『砂漠の惑星』 所謂、ファーストコンタクト三部作

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