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プロの見解

ご本人に許可を得たので、mixiに掲載された日記を転載いたします
書いているのは冨水明(とみみずあきら)氏
爬虫類界では第一人者のライターです

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「国内で初の事故」
ニュースからおいでになった方は、次の「ニシキヘビとは」という日記も合わせて読んでいただいた方がよろしいかと。

正直、何をどう書いて良いかわからない。

しかしながら、まずは亡くなった藤田さんのご尊父の冥福をお祈りしたい。

昨夜、連絡は来ていたのだが、事実確認の取れないことが多くて、結局眠れなかった。

アミメニシキ。いわゆる世界最大のヘビである。09年の静岡のイベントに行った方なら実物は見ているはず。あのタイガーレティックである。参考までに今回の実際の個体の画像を貼っておく。

ちなみにこの個体は国内最大級であり、そこらにこんな大きいのを飼ってる人が何人もいるわけではない。

なにせ、国内でハブやマムシ、ヤマカガシといった国産以外の爬虫類、ワニやドクトカゲといったものも含め、外国産爬虫類に人が殺められるというのは初めてのことなので、私もどう書いていいものかわからない。

まず間違いなく餌と間違えて襲われたのだと思う。というか間違いない。

亡くなった原因は現在2つ考えられているが、別に咬まれてなくなったわけではない。もちろん呑み込まれてしまったわけでもない。

ちなみに想像しているのは、絞められたケースと、巻き込まれた際に転倒して頭部を打撲したケース。

もう、本当に不幸な事故としか言いようがないのだが、やはり4メートル超えの個体は一人で扱うべきではない。

アミメはたしかに頭が良いが、そのぶん人を怖がらないし、餌の匂いを感じとって捕食スイッチが入ってしまえば、一気にがむしゃらになり、最初に咬みついた場所が手であろうが巻き込む。

私も3メートルのキイロアナコンダにやられたことがあるが、巻きつくのを外すのに苦労した。それが6メートル超えとなれば、ほぼ不可能だろう。

痛ましい事故ではあるが、確実に世論は「こんなものを飼わせるのがおかしい」というものになるだろう。今回の事故で言えば、危険動物飼育の許可を取って正式に飼われていたのだが、ニュースにそのあたりは出てこない。ケージから出てもそれ以上は逃げないようにしてあったとしても、ニュースを読めば「逃げたらどうする」と言われてしまう。

どのみち、この事件で一気に我々への風当たりは強く厳しいものになる。人が亡くなっているのだから、当たり前である。どんな理論武装したところで、世間を納得させられるものではない。

いま我々ができることは、せいぜいが人に聞かれたら、国内でも初めての非常に稀な事故であることを伝える、現在飼育している個体の脱走等に気をつけるといったくらいなものだ。

ワイドショーなどで面白おかしく報道されないことを祈るばかりである。

■体長6・5mのヘビにかまれ?66歳男性死亡
(読売新聞 - 04月15日 11:48)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=1986729&media_id=20

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「ニシキヘビとは」
ニシキヘビはアジア、アフリカ、オセアニアに分布する、古い形のヘビの総称です。アナコンダで有名なボアの仲間とは兄弟のような関係です。

大きなヘビという印象がありますが、40種ほどいる中で、平均すれば2メートルほど。小型種は1メートルにもなりません。

一方で4メートルを超す種は今回のアミメニシキを筆頭に7種ほど。

すべての種に毒はなく、餌は、絞めて殺します。

攻撃のために巻くことはなく、あくまでも相手を絞め落とすために巻きます。

また、言われるように「絞めて骨を砕いて呑み込む」といったことはしませんし、できません。

巨大な個体なら鎖骨や肋骨は事故的に折れるかもしれませんが、狙ってすることはありません。

基本的には相手の体に巻き付くと、獲物の呼吸に合わせてちょっとずつ力を入れていきます。そうすることで肺から空気を絞り出してしまうわけです。

極めて省エネな生き物なので、最初に押さえるのには全力で巻き付きますが、そのあとは最小限の力で絞め殺します。

ゆえに人間で言えば、首に巻かれなくても、胴体にさえ巻きつくことができれば絞め落とすことが可能です。

そうして抵抗できなくしてから、ゆっくりと丸呑みするわけですが、通常は必ず頭から呑み込むます。

その際にあちこちをくわえて呑みやすい場所を探すことがあるので、あちこちに咬み傷が残る場合もあります。

人間や類人猿のように頭部から肩が極端に張り出している獲物の場合、頭から呑んでも肩が引っ掛かるので、過去の例では、全身を巻いて、直立状態にし、足を揃えて(万歳をした状態)そこから呑んでいます。

絞め殺すだけなら4メートルあれば可能ですが、呑むとなると6メートル超えの個体でないと難しいでしょう。

今回の不幸な事件が、どういった状況だったかは、当事者がお亡くなりになっているのでわかりません。

考えられるのは、ヘビが差し出された餌にアタックする際に目測を誤り、餌と間違えて巻いてしまったケース。

餌の匂いに興奮して、ケージを開けた瞬間にアタックしてきたケース。

この2つですが、直接の亡くなった理由に関しては、頭部からの出血が多いということから、頭部を咬まれたのちに絞められたケースと、咬まれて引き摺り倒されてどこかにぶつかったということが考えられます。

いずれにせよ、本当に稀な事故なのですが、純粋に事故は事故として理解いただければと思います。

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併せて今回の事故を扱った2人の獣医師のブログをリンクしておきます

わたらい先生は、猛禽治療のプロです
<わたらい先生の憂鬱>

ヴァンケット動物病院の院長は、私の爬虫類仲間の1人です
とても真摯で熱血でタフなナイスガイです
そしてご多分に漏れず「変態」です ^^;
<ヴァンケット動物病院のブログ>

Albino_citrus_reticulated_python

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